こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
今回は装具の中でも一番知名度が高い、かつ必要としている人が多い「インソール」についてご説明します。
インソールとは靴の中敷きのことです。そのなかでも、義肢装具士が作るオーダーメイドのインソールのことを足底装具と呼びます。
今回はあまり細かいことは考えず、インソール全般について義肢装具士目線でご説明していきます。
インソールの機能
インソールの肝となるポイントを示したのが下の図です。

「アーチ」というのは橋のように弧を描いて、上に乗るものを支えている構造を言います。
上図のように、インソールには3つのアーチがあって、それぞれに土踏まずを支えています。
ヒールカップは踵が靴の中でぐらぐらと動いてしまわないように、支える役目をしています。

私たちの足には土踏まずが三つもあることになるんですね。
土踏まずと言えば、足の内側にある部分しか知らないのですが…
そうですよね、通常土踏まずと言ったら足の内側にある部分で、足跡で言うとちょうど色がうつらない部分です。
では、実際の足跡を見てみましょう。よーくみると、体重がかかって足跡が濃くなっている部分とそうでもない部分がありますよね。

みなさんが想像する土踏まずの部分は白く色がついていない部分ですが、よく見ると色がついている中でも、薄くなっている部分と濃くなっている部分があるのがわかります。
縦アーチ(内側)、縦アーチ(外側)、横アーチのそれぞれに色を塗ってみたのが、次の図です。

扁平足とは

全てのアーチが繋がって土踏まずを作っているのですね。
よく「扁平足」という言葉を聞きますが、これらのアーチがつぶれて土踏まずが低くなった状態を扁平足というのですね。
はい、この三つのアーチは独立しているのではなく、足の骨と靱帯で繋がりあっています。
そのため、どこか一つのアーチがべちゃっと潰れてしまうと、全てのアーチがバランスを崩して潰れてきてしまいます。この状態を扁平足と呼びます。
この三つのアーチをバランスよく支えてあげるのがインソールの役目です。

三つのアーチで作られた土踏まずを、バランスよく支えなければいけないのはわかりました。
では、そもそも土踏まずにはどんな役目があるのでしょうか?
土踏まずには、重要な役割が二つあります。
土踏まずの役割
【1】地面からの衝撃を吸収する
【2】歩行時に前への推進力をうみだす
土踏まずは、しなやかにたわむ三つのアーチでできています。例えば、跳び箱の踏み台をイメージしてもらえばよいかと思います。
踏み台がたわむことで、足にかかる衝撃が緩和され、さらに前に飛び出す推進力を生みだします。
土踏まずがつぶれた状態で歩くのは、踏み台なしで跳び箱を飛ぶようなものなので、前に進もうとすればするほど足や膝、腰にまで衝撃が広がります。
その結果、膝や腰に過度な負担がかかったり、普通の人より足が疲れやすかったりします。

ハイアーチとは

なるほど、よくわかりました。
それにしても、私は扁平足ではないし、どちらかというとアーチが高い方だと思っているけど、足の裏が痛くなりやすいんですよね。
土踏まずが人よりも高い場合「ハイアーチ」といって、これはこれで足の裏に痛みがでやすかったり足が疲れる原因となります。
通常「ハイアーチ」というと、縦アーチの内側が過度に上がっている状態を言います。多くの場合、ハイアーチの原因は足の裏の筋肉が硬く張ってしまっていることです。
先ほどの踏み台の例で考えると、踏み台自体が硬すぎてうまくたわまない状態です。
さらに、内側のアーチが高いことで足の外側や踵、前足部(足指の付け根とその先の部分)に過度な負担がかかってしまいます。
例えるなら、お神輿で誰か一人が持ち上げすぎてまわりが迷惑する、みたいな状態でしょうか。
そのため、インソールで上がりすぎた内側のアーチと、バランスをとるように外側のアーチと横アーチを支えます。
さらに内側のアーチをインソールで柔らかく支えることで、踵や前足部への負担を減らします。

外反母趾とは

なるほど、とてもよくわかりました。
私の友人は外反母趾で悩んでいます。これもアーチの崩れが原因ですか?
外反母趾はもともとの骨格が原因の場合もありますが、変形が進行したり前足部にタコができるような場合、アーチのバランスが崩れている可能性があります。
外反母趾とは、何らかの原因で横アーチが潰れて、前足部の幅が過度広がることによって、指の先が内に向いてしまう現象です。
少しイメージしにくいので、また例を挙げると、ブラインドカーテンの一部分だけ無理に開くと周りが狭まってしまうような感じでしょうか。
そのため、インソールで横アーチを支えて足幅が広がりすぎないようにすることが大事です。

市販のインソールについて

症状は人それぞれですが、インソールで崩れた足のアーチをバランスよく支えることが大事なんですね。
インターネットで調べると市販のインソールがたくさんでてくるのですが、市販のインソールでも良いのでしょうか?
そうですね、怪我や病気などの原因がなければ、まずは市販のインソールを試してみるのも良いと思います。(怪我や病気が疑われるときは、まず整形外科の受診をおすすめします!)
インターネットで調べると玉石混交でたくさんの商品が出てきますが、正直「値段の割に…」というものもあります。
私のおすすめは、やはり店舗に行って一度足を乗せてみることです。
大型のスポーツショップなどに行けばいろんなメーカーのインソールが販売されていて、お店によってはサンプルもたくさん置いてあります。
とは言え何を見ればよいのかわからない、という人のためにポイントをいくつか挙げて、個人的におすすめのものをご紹介しておきます。
インソール選びのポイント①「3つのアーチサポート」
前半でご説明した3つのアーチサポート「縦アーチ(内側)」「縦アーチ(外側)」「横アーチ」がしっかりとついているかをまず確認してください。
縦アーチはついているけど、横アーチがついていないものが多いです。
その理由としては、横アーチは縦アーチに比べてあるべき場所と高さに個人差があるからです。また、横アーチは普段土踏まずとして意識していない人が多いので、違和感を感じやすいです。
そのため、良いと言われるインソールでも、意外と横アーチはついていないことがあります。
横アーチは主に外反母趾の進行予防と前足部への負担軽減が目的なので、外反母趾や前足部の痛みがなければ横アーチはあえて諦めても良いかもしれません。
インソール選びのポイント②「柔らかすぎない」
市販のインソールを見ていると、柔らかすぎるものが多いように感じます。
手で押さえて簡単につぶれてしまうようなアーチサポートだったら、人の体重が乗ると一瞬でペタンコになってしまいます。
足の蒸れを防ぎたいとか、靴の大きさ調整のために入れるインソールなら、柔らかくてもいいのですが土踏まずをサポートする目的ならば硬さのあるインソールの方が良いでしょう。
インソール選びのポイント③「履きたい靴との相性」
インソールがどれだけいいものでも、靴に入れるときつくなってしまったり靴の中で動いてしまっては意味がありません。
もし履きたい靴が、革靴とかパンプスとか細身の靴なら、細くて薄いインソールがいいでしょう。
また靴によってはもともと入っている中敷きが外せない場合もあります。そんな場合も、なるべく薄めのインソールを選ばないと靴がきつくなってしまいます。
インソールを買いに行くときは、必ずインソールを入れたい靴を履いていくようにしましょう。
おススメの市販インソール
私が皆さんの代わりに、大型のスポーツショップにいっていろんなインソールを試し履きしてみたので、その中でおススメのインソールをご紹介しておきます。
バネインソール(Ba2ne)
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アーチ部分が一体型のプラスチックシェルになっていて硬さがあり、ヒールカップもしっかりしています。
前足部は薄くクッション性があるので、足の蹴りだしもスムーズに行えます。
ただ、横アーチはついていなかったので、外反母趾や前足部に痛みがある方にはお勧めしません。
ベーシック、ウォーキング、アスリートなどいろんな種類があるようです。
個人的に色やロゴデザインが可愛いので好きです。
シダスインソール(SIDAS)
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こちらもアーチ部分がプラスチックシェルになっており、硬さがあってヒールカップもしっかりしています。
前足部は薄くクッション性があるので、足の蹴りだしもスムーズに行えます。
シダスのインソールは、やや控えめですが横アーチサポートもついています。
とても種類が豊富です。有名なメーカーなのでどこのスポーツ用品店にも置いてあると思います。
スーパーフィートインソール(Superfeet)
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これもアーチ部分が一体型のプラスチックシェルになっていて硬さがあり、ヒールカップもしっかりしています。
前足部は薄くクッション性があるので、足の蹴りだしもスムーズに行えます。
スーパーフィートの特徴はローアーチ、ミディアムアーチ、ハイアーチと縦アーチの高さを選べることです。
ただ、自分がローなのかハイなのか見極めるのは結構難しいので、試着は必須かと思います。
ソルボインソール
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最初の三つはスニーカー用のインソールですが、ソルボインソールはパンプスや革靴に入れられるように薄いもの作られています。
ハーフインソールタイプもあるので、パンプスにも入れられます。
外反母趾対策をうたっているだけあって縦アーチと横アーチがちゃんとついています。
ただやっぱり結構柔らかいので、効果を感じない人もいるかもしれません。
オーダーメイドインソールについて

いろんなインソールがあるけど、どれも考え方は同じで土踏まずを支えているのですね。
オーダーメイドインソールは市販のインソールとどのようにちがうんでしょうか?
オーダーメイドインソールと言っても、いろんな作り方があります。
私が作っているのは市販でおススメしたインソールと同じように、アーチ部分がプラスチックシェルになっていて硬く、前足部は薄いクッションで踏み返しやすい構造になっています。
構造的には似ているけど、市販のインソールと違う所はそれぞれの足型をとって作製するので、かなり攻めたアーチサポートがつけられます。
また、使う人の悩みに合わせて
外反母趾なら、横アーチをしっかりとつける
扁平足なら、内側の縦アーチをしっかりとつける
ハイアーチなら、縦アーチの内側を柔らかく支えて外側をしっかり支える
タコができている部分は、特別に体重がかからないようにする
履いている靴に合わせて厚みを調整する
などなど、オーダーメイドならではの工夫を凝らすことが出来ます。
また、オーダーメイドで作ったインソールは作製後もアーチの高さやインソールの厚みを、ある程度調整できます。そのため、もしかしたらちょっと厳しいかもなぁ…というアーチの高さにも挑戦できます。
市販のインソールの場合「買ってみたけど痛くて使えなかった」というのが、一番残念な結果ですよね。
だから、そのようなことがないように市販インソールのアーチサポートは全体的にやや低めに設定されています。
そのため、市販のインソールで解決しなかったお悩みがオーダーメイドインソールでは解決できる可能性があります。
オーダーメイドインソールの価格
オーダーメイドインソールの価格はお店によっていろいろですが、足型をちゃんととって作る場合、安くても両足で2万円以上はすると思います。
市販のインソールは高くても1万円程度なので、まずは良いとされる市販インソールを試してみて、それでも解決しない悩みがある場合オーダーメイドインソールを試してみてはいかがでしょうか。
また、足底装具としての基準価格は両足で35,400円(税別)です。
なにか病気や怪我が原因で足底装具が必要となった場合は、医師の処方を受けることで補助が受けられます。
補助制度に関しては以下の記事をご覧ください↓
余談ですが、たまにお店の一角などでオーダーメイドインソールと称して、あまり良いと思えないインソールを高額で売っているのを見かけます。
この記事を読んだ方は大丈夫かと思いますが、オーダーメイドインソールを作ってもらう場合は慎重にお店を選びましょう。
ちなみに、私の運営する装具ラボSTEPsでもASHIKARAインソールというオーダーメイドインソールの作製を行っています。
ご興味がある方はホームページをのぞいてみてください(*^^*)
フィットするオーダーメイドインソール ASHI KARA(あしから)
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具難民をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。
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