プラスチック短下肢装具の修理費用

制度・テクノロジー

こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。

装具の修理をしたくても、だいたいの金額がわからないと修理依頼もためらってしまいますよね。そんな方のために、今回は具体的なプラスチック短下肢装具の修理費用について説明します。

金属支柱付き短下肢装具の修理についてはこちらをご覧ください↓

装具の修理費用も装具価格と同様に、厚労省が定めた最高限度額があります

厚労省で示されている価格は最高限度額であるため、ここに記載してある価格より安くなることはありますが、これより高額になることは基本的にはありません。

また、修理に関しても療養費支給制度もしくは補装具費支給制度で、申請すれば補助の対象となります。

補助制度の説明はこちらです↓

※令和7年1月現在価格

プラスチック短下肢装具の修理価格

上図に示すのが、厚労省で定められた修理価格です。

また、プラスチック短下肢装具の耐用年数は1年半、消耗部品に関しては1年、と定められていますが、修理は必要があれば1年以内でも補助対象となることが多いです。

上記の金額に告示加算と呼ばれる、消費税を考慮した加算額6%が加わります。(自費の場合は加算額が変わるかもしれません)

プラスチック短下肢装具の各部名称についてわからないところがあればこちらをご覧ください↓

では、それぞれの項目について補足をしていきます。

マジックバンド交換

マジックバンドは最も消耗しやすい部品なので、交換頻度が高くなると思います。

Gさん
Gさん

私も毎日装具を着け外しするので、だいたい1年に一回ぐらいベルト交換をしています。

私の装具でベルトをすべて交換するとしたら、いくらになりますか?

Gさんの装具

【修理代金の詳細】

下腿ベルトは、通常の革とマジックテープが縫い付けられたベルト(裏ありベルト2,600円

足関節ベルトは、直線ではなくY字の二股に分かれたベルト(T・Yストラップ3,800円

足先ベルトは、裏に革を縫い付けていないマジックテープのみのベルト(裏なしベルトで、2.5㎝幅裏ありベルトの半額の940円

Gさんの装具のベルトを交換する場合、上記のようになります。

Gさん
Gさん

なるほど。足先の薄っぺらいベルトは、他のしっかりしたベルトの半額なんですね。

細かいことを言って恐縮ですが、例えば4㎝幅のベルトだといくらになるのですか

義肢装具士
義肢装具士

そうですね、装具によく用いられる2.5㎝幅と5㎝幅について基準が設けられていますが、それ以外は記載されていません。

記載のない部分は製作所の方で適正価格を提示し、申請先(役場・保険者)がそれを判断することになります

私だったら、2.5㎝幅以下のサイズは1,880円、2.5㎝幅より大きいサイズは2,600円と考えて、4㎝幅なら2,600円で提示しますね。

詳しくは、補装具支給に関するQ&Aにおいて、以下のように記載があります。

修理基準の種目欄、名称欄、型式欄又は修理部位欄に定められていないものに係る修理が必要な場合には、他の類似種目の修理部位等を参考とし、又はそれらの個々について原価計算による見積りもしくは市場価格に基づく適正な額を決定し、修理に要する費用として支給できることとしている。

Gさん
Gさん

確かに、オーダーメイドで作製されたものについて、全ての基準を明示するのは難しいですよね。

じゃあ、もし反対側の金属の輪っかだけ交換したい!となると、どうなるんですか?

義肢装具士
義肢装具士

そうですね~💦これも基準にはないので、まぁ500円ぐらいですかね。

ただし、装具の納品後9カ月以内に、通常の使い方でカンが外れてしまったような場合は、製作所の取り付け不良として無償で修理を依頼できます

本人の取扱不良による破損か、製作所の取り付け不良による破損か、というのは正直判断が難しいところですけどね。

補装具支給ガイドブックにも以下のような記述があります↓

補装具の引渡し後の不具合等については、災害等による毀損、本人の過失による破損、生理的又は病理的変化により生じた不適合、目的外使用若しくは取扱不良等のために生じた破損又は不適合を除き引渡し後9ヶ月以内に生じた破損又は不適合は、補装具業者の責任において改善すること

足部・下腿部の内張り交換

内張りに関しては、汚れが気になって頻繁に交換する方もいれば、破れたり剥がれたりするまで気にしない方もいます。

だいたい、ベルト交換などのタイミングで一緒に交換することが多い部分です。

Gさん
Gさん

私の装具はふくらはぎ部分に内張りはついていないのですが、下腿部内張りとはどういったものですか?

プラスチックの内面に貼られた材料を「内張り」と呼びます。貼られる場所によって足部内張り、下腿部内張りと名称が変わります。

上の写真では下腿部内張りとして、ネオプレンと呼ばれる繊維+ゴムのクッション材がつけられていますが、他にもウレタンの内張りや革の内張りもあります。

Gさん
Gさん

じゃあ、くるぶし部分にだけ貼ってあるクッションの交換や、足部に貼ってある指まくらの交換はどうなるのですか?

ちなみに、内張りは薄いシートのようなものでも、ぶ厚いクッション材でも価格は同じということですか?

義肢装具士
義肢装具士

限られた一部分だけの内張りに関しては基準にないので、製作所で適正価格を提示することになりますね

交換の手間にもよりますが、どちらもだいたい500円~1000円というところでしょうか💦

内張りは材料に関係なく一律の金額設定になっています。材料がそんなに高額になることは少ないので、手間賃と考えてもらった方が良いかもしれませんね。

滑り止め交換

滑り止めは、よくすり減る人もいれば、そうでもない人もいます。歩き方や、歩く場所、靴を履くかどうかにもよります。

滑り止めに関しては、消耗すると滑ったり躓いたりするリスクが増えるので早めの交換をおススメします。

Gさん
Gさん

滑り止めごと交換再接着でずいぶんと金額が違うのですね

どちらの修理が当てはまるのかは、どうやって判断するのですか?

義肢装具士
義肢装具士

はじめに書いたように、滑り止めがすり減るスピードはかなり個人差があります。

場合によっては、接着剤の経年劣化で滑り止めが剥がれたけれど、滑り止め自体は全然すり減っていないことがあります。

そんな場合は滑り止めの再接着1,950円で済みます。利用者負担で修理を行う場合、10カ月以上たっていることが前提なので、実際は滑り止め交換6,150円になる場合が多いです。

滑り止めのすり減りには個人差があるので、使用状況や歩行の癖に合わせて滑り止めの材料や接着方法を工夫するのも義肢装具士の役目です

ただし、滑り止めの材料の多くはゴムなのですり減らないように、厚く硬いものを選べば選ぶほど、重くなります。

重量と修理頻度どちらを優先するか考えて、滑り止めを決める必要がありますね。

足継手の交換

プラスチック短下肢装具の足継手としてついている部品が破損してしまった場合、継手の交換をすることになります。

ここでは、タマラック継手とゲイトソリューション継手の交換を例に出します。

【足継手 タマラック交換の場合】

14,050円(継手交換にかかる技術料)+7,200円(パーツ代)=21,250円

これに、告示加算6%を付加して 22,525円です。

【足継手 ゲイトソリューション交換の場合】

14,050円(継手交換にかかる技術料)+67,400円(パーツ代)=81,450円

これに、告示加算6%を付加して 86,337です。

Gさん
Gさん

継手交換は修理にしてはかなり高額になるんですね。

実際、継手交換を行うことはあるのですか?

義肢装具士
義肢装具士

そうですね、実際にはプラスチック短下肢装具で継手交換を行うことは少ないです。

継手が破損してしまった場合、同じ仕様で装具ごと新しく交換になるか、継手の種類を再検討して作り直す場合が多いですね。

プラスチック短下肢装具において継手交換が行われない理由を、少し詳しく説明します。

まず継手が破損するほど消耗している場合、プラスチック本体の消耗も激しく、装具ごと新しく作り替えになるケースが多いです。

一方、プラスチック本体がそこまで消耗していないのに、継手が破損したという場合は、継手が使用者の歩行能力に合っておらず、無理がかかっているということが考えられます

その場合は、使用者の能力に合った継手を再検討し、新しく装具が作り替えになります。

Gさん
Gさん

せっかく高額な修理費用を補助してもらっても、修理後すぐに本体が破損してしまったり、すぐにまた継手が破損してしまったら意味がないですからね。

修理が妥当か、新規作製が妥当かはまずは相談してみることが大事ですね。

以上がプラスチック短下肢装具の修理に関する説明です。

修理が妥当か、新規作製が妥当かというのはなかなか、使用者が判断することはできないと思いますが、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

実際に修理の際は、装具の実物を提示して義肢装具士にご相談ください

装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。

生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具難民をゼロにすることを目指しています。

気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。

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