こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
今回、解説するパーキンソン病は日本国内で20万人以上の方が診断を受けており、決して珍しい病気ではありません。
発症のピークは50~65歳ごろで、完治が難しく進行もゆっくりなので、診断を受けてから約20年以上と、長く付き合うことが多い病気でもあります。
そのため、いかに薬やリハビリ、装具を上手く使って、生活を続けるかがパーキンソン病患者さんにとって非常に大事になります。
この記事では、パーキンソン病の方に役立つ装具と靴について、わかりやすくご説明します。
パーキンソン病でよくある歩行や姿勢の困りごと
前傾姿勢
背筋や体幹の筋肉バランスが崩れて、身体が前に倒れたような姿勢になりやすいです。
この前傾姿勢と、後に説明する「すくみ足」「小刻み歩行」「首下がり」などが組み合わさることで、余計に転倒しやすい状態になります。
すくみ足(freezing of gait)
すくみ足とは歩こうとするときに、足が床に張り付いたように動かなくなる現象です。
英語ではfreezing of gaitと呼ばれ、まさにフリーズしたように、足が前に出なくなることを言います。
出入り口などの狭いところや、曲がり角で方向転換するときなどに起こることが多く、転倒の原因にもなります。
小刻み歩行(short stepped gait)
すくみ足と言葉は似ているけど、現象としては異なります。
小刻み歩行は歩いているうちに、歩幅がどんどんと小さくなって、足をチョコチョコ動かすような歩き方になる現象です。
前傾姿勢と合わさって、身体が前方に傾き、こちらも転倒の原因になります。
首下がり症候群
首下がり症候群とは、首の筋肉が弱くなったり、硬くなったりすることで、頭が前に垂れ下がってしまう状態を言います。
顔が常に下を向いてしまい、前を見るのが難しくなり、食事や歩行にも影響が出ます。
また、首が下がることで、肩や背中が疲れやすくなります。
インソール(足底装具)でできること
足指でつかむ工夫
パーキンソン病の方の多くは、筋力低下に伴い足指で踏ん張る力が低下しており、それが転倒リスクにつながっています。
足趾把持能力(足指で踏ん張る力)を高めるインソールの装着により、歩行能力の改善がみられた報告もあります。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/10/3/10_125/_pdf)
具体的にどのような工夫が良いかというと、足指の付け根部分に少し出っ張り(把持バー)を作って指先部分にはクッション性の高い素材を設置します。
それによって足指で床をつかむ力が高まり、転倒リスクの軽減に繋がります。
前方にズレない工夫
パーキンソン病の前傾姿勢と小刻み歩行により、靴の中で足が前方にズレて足指が圧迫される現象が起きやすいです。
それによって足指が靴の先で圧迫されて痛みが出たり、爪の色が変わってしまうことがあります。
インソールで土踏まずを支えることで、踵の位置を安定させて足の前ずれを防ぐことが出来ます。
また、前滑りしにくいような素材をインソール表面に貼ることで、前滑りの防止ができます。
バランスを改善する
インソールで足裏のアーチを支えることで、立位時や歩行時のバランスを改善します。
同じパーキンソン病でも、バランスの崩れ方は人それぞれです。
前傾姿勢によって重心が前方にあるのか、それとも重心が後方にあることがすくみ足を助長しているのか。内側に傾いているのか、外側に傾いているのか。
そういった、荷重のかかり方を計測してそれぞれに合ったインソールでバランスを整えることが、転倒リスクの軽減に繋がります。
おススメの靴の選び方
靴選びのポイント
パーキンソン病の靴選びのポイントをまとめました。
ポイントは以下の通りですが、人によって感じ方は違うので、実際に試してみてフィット感を確認して使うことをおススメします。
【パーキンソン病における靴選びのポイント】
安定性のあるソール(靴底)
ぐらつきやバランスの崩れを改善するためには、安定性があって幅広のソールを選ぶのが良いでしょう。
つま先が少しあがっている靴
すくみ足などで足が引っかかるのを防ぐため、つま先がしっかりと上がっている(トゥスプリングがある)ものを選びましょう。
ヒールが高すぎない靴
ヒールが高いと前傾姿勢が助長されやすいので、ヒールが高すぎないものを選びましょう。ただし、完全にフラットな靴だと足が前に出にくいので、完全にフラットなものは避ける。
軽量な靴
パーキンソン病では足を上げにくい状態であることが多いのでなるべく軽量な靴を選ぶのが良いでしょう。ただ、軽すぎる靴は安定性に欠けるので、ソールの安定性を重視してできるだけ軽いものを選ぶ。
脱ぎ履きしやすい靴(マジックテープなど)
手先が上手く動かせなくてもしっかりと締められる靴を選ぶ。スリッポンやサンダルなどは脱げやすくて転倒に繋がるので、踵を固定できるものを選びましょう。
中敷きが交換可能な靴
足指のトラブルや前滑りのトラブルに備えて、中敷きを交換してインソールを入れられるものを選ぶのが良いでしょう。
以上のポイントから、具体的なおススメの靴をご紹介します。
ハザップHAZAP(アシックス)
アシックスとRIZAPのコラボ商品。足指でつかむ動きをサポートする特殊なインソールが、パーキンソン病の前傾姿勢による転倒リスクを軽減する。
通気性のあるニット素材で軽量なのに、ソールは安定性があるのがポイント。
つま先はローリング形状で足が前に出やすい。まさに、パーキンソンにおススメの機能を兼ね備えたウォーキングシューズです。
バイオフィッター biofitter ウォーキングシューズ
「からだ想い」をスローガンにしたバイオフィッターのメンズシューズ。
マジックテープ(面ファスナー)タイプなので脱ぎ履きも楽に行えます。
滑りにくくしっかりしたソールと、踵に安定性があるうえに、軽量設計であることがおすすめポイント。
SaiSai ストレッチスニーカー
『履きやすさ』と『ストレッチ性能』の両立を実現したストレッチスニーカー。
とにかく履きやすく軽量で、甲ベルトがついていて固定性もあるのがポイント。
滑りにくいソールで安心の履き心地。
SaiSai ストレッチニットスニーカーWG110 3E~7E相当 男女兼用 彩彩 むくみ 外反母趾対応靴 マリアンヌ 価格:5940円 |
おすすめポイント
- マジックテープで調整可能
- 滑りにくいソール
- とにかく履きやすい
- 軽量設計
頸椎装具でできること
パーキンソン病において頸椎装具は「姿勢を無理に治す」ためではなく、少しでも楽な姿勢で過ごすことを目的としています。
そのため、いくら頸椎装具で姿勢が良くなったからと言って、本人が楽にならないなら意味がありません。
以下の目的を踏まえつつ、装着感を重視して選ぶことが大事です。
【パーキンソン病における頸椎装具の目的】
前傾姿勢の軽減
パーキンソン病にみられる前傾姿勢は、単に猫背になるだけではなく「首下がり症候群」から連鎖的に起こることが多いです。そのため、頸椎装具で首の下がりを支えることで、前傾姿勢の軽減が期待できます。
首や肩の負担軽減
パーキンソン病の人にとって、首や肩のこり、痛みはよくある辛い症状です。これは筋肉のこわばりや姿勢の崩れが原因なので、頸椎装具で首を支えることが負担軽減に繋がります。
視野の確保
前傾姿勢で首が下がることで、視野が狭くなり常に地面を向くような状態になりがちです。それによって「歩くときに障害物が見えず転倒に繋がる」「食事がとりにくい」「会話の時に顔を合わせられない」などの弊害があります。それらの弊害を防ぐためにも、頸椎装具による視野の確保は効果的です。
パーキンソン病におススメの頸椎装具
ソフトカラー
柔らかい素材でできた頸椎装具。首の動きをある程度許容しながら支えるタイプ。
首にかかる重みを一部分散し、視野を少し上に持ち上げることが目的。
【店内全品ポイント2倍★28日9:59迄】【お取り寄せ】アルケア 10423 ポリネックソフト M 頸椎カラー 外科 整形外科 診療科目別 看護 医療 価格:4929円 |
VISTAカラー
高さ調整可能なあご受け付きの頸椎装具。ソフトカラーよりも、固定性が高いが軽量で通気性が良いのが特徴。
あご受けの高さを簡単に調整できるので、使う人に合った高さで快適性を保って使えるのでおススメ。
頸椎装具についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をごらんください↓
パーキンソン病の姿勢の悩みは本人の意識だけでは解決が難しいものです。
インソールや靴、頸椎装具は姿勢の崩れによって起こる様々な弊害を少しでも軽減してくれる、強い味方です。日常生活を少しでも楽に、安全に過ごすために取り入れてみるのはいかがでしょうか?
装具ラボSTEPsでは頸椎装具の試着なども承っております。お気軽にお問い合わせください。
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。
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