こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
装具をつけて生活している人は「この装具はいつまで着け続けるのだろう?」「装具なしで生活したい!」といった思いを、一度は抱いたことがあるかと思います。
実際、私が対応している中で「装具を軽くしたい」「装具をやめたい」という相談はとても多いです。
この記事では「装具を軽くしたい」「装具をやめたい」と思った時に、いったん立ち止まって考えて欲しいポイントを書きます。
これは無理に装具を使わせる話でも、夢を打ち砕くような話でもないので、安心して読んでいただけると幸いです。
まずは装具の役割を再確認
装具の役割は病気発症直後の回復期での役割と、退院後の生活期での役割が少し違います。
そのため、ここからは回復期と生活期に分けて装具の役割をご説明します。
急性期・回復期での装具の役割
急性期・回復期(発症後おおむね6か月以内)の装具はリハビリテーションの一部であると考えると良いでしょう。
脳卒中では発症後、できる限り早くリハビリを開始して「立つ」「歩く」などの運動療法をすることが、機能回復のために良いとされています。
しかし、立つ、歩くなどのリハビリには転倒のリスクが伴います。
そのため、理学療法士さんが入念に安全を確保し介助するのですが、その時に役に立つのが長下肢装具や短下肢装具です。

いくら上手に介助しても自分の手は二本しかありませんから、私たちで支えられる箇所は限られてしまいます。
そこで長下肢装具が膝を伸ばした状態で支えてくれたり、短下肢装具が足首を持ち上げてくれるとリハビリの幅が広がります。
退院までに装具の役割は変化する
とはいえ、回復期で作った装具を入院中の6カ月間しか使わないわけではありません。
その6か月の間に、膝が安定してきたら短下肢装具にカットダウンすることもあるし、より実用的な歩行を目指すようになれば、足首の動きに自由度を出す場合もあります。
このように装具の機能を変化させるだけではなく、これまでリハビリの一部として使っていた装具を生活の一部に変化させていく必要があります。
そのため、退院前には装具を自分で着け外しをする練習や、装具を履いて靴を履く練習などを取り入れていくことになります。

明確に意識することはなかったけど、装具がリハビリの一部から生活の一部へと変化するというのは納得です。
リハビリの目的で作った装具が、生活の一部という役割を十分に果たせるのか、少し心配はありますね。
生活期(退院後の生活)での装具の役割
退院後の生活において装具の役割は「使う人の生活を安全で、豊かにすること」に変化します。
もし、装具を着けることで生活の安全性が失われるなら装具を着ける意味がないし、装具を着けることで生活の豊かさが失われるなら装具を着けない方が良い場合もあります。
リハビリで使っていた装具が生活に合っていないと感じるなら、それは装具を見直した方がよいかもしれません。

病院で装具を作る場合、退院後の生活のことを一切考えないかと言ったらそうではないのですが、回復期に効果的なリハビリを行うことが優先にはなります。
装具外来など、退院後に装具を見直す機会があれば良いのですが、現状は制度として整っているとは言えません。
装具をやめたい・軽くしたいと思っている人へ
ここまでで、病院で作った装具と退院後に生活の中で使う装具で、役割が変わってくることが理解できたのではないでしょうか。
病院ではリハビリの時間に装具を着けて訓練をするのがルーティンになっていますが、退院してからは装具を着けるか着けないかは、基本的には本人の自由になります。
そんな中で装具を着けることをやめたい、軽くしたいと思う人がいるのは当然のことです。
では、いったいどのような理由で装具を着けることをやめたい、軽くしたいと思う人が多いのか、それに対する対策も見ていきましょう。
装具を着けるのが面倒くさい
麻痺があると、ただでさえ服を着たり靴下をはいたりが大変なのに、さらに装具をつけるのが面倒になるというのはよくある理由です。
装具の着脱に介助が必要な場合は、介助者にとって負担になる場合もあります。

Hさん
デイサービスに出かける忙しい朝や、ちょっとそこまで出かけるときなど、つい装具をつけるのをさぼってしまうことがあります。
装具をつけるのを誰かに手伝ってもらうのが、気が引けるという理由もありますね。

みうら
装具の着脱に時間がかかってしまう場合や、介助が必要な場合は、ベルトの仕様を工夫するだけで着けやすくなることがありますよ。
また、一日の中で着脱回数が多いと面倒になるので、できたら朝に装具を着けて日中は着けたまま過ごせるぐらい、快適に着けられるように工夫したいですね。
装具の装着を楽にするベルトのデザインなどについてはこちらをご覧ください↓
装具をつけていると靴が履けない
病院で装具を作ったときは、装具用の大きなサイズの介護靴を一緒に購入して履くことが多いですが、退院後は「今まで履いていた普通の靴を履きたい」と思う方も多いでしょう。
大きい靴を履くことを想定して作った装具では、普通の靴が履けないことがほとんどです。
履きたい靴が履けないなら、装具は着けたくないと思ってしまう人もいます。

Hさん
私も装具用の介護靴には最初、抵抗がありました。
装具を着けている以上、諦めるしかないと思っていますが、もっと若いころだったら装具の方を諦めていたかもしれません。

みうら
生活するうえで、履きたい靴が履けないというのは大きなデメリットだと思います。
履きやすい靴を選んだり、靴を加工して入りやすくするという方法もありますが、一方で装具を工夫して靴に入りやすくする方法もあります。
装具を履くことを諦めてしまう前に、一度ご相談いただきたいです。
靴を履きやすくするための装具の工夫についてはこちらの記事をご覧ください↓
装具をつけて履きやすい靴についてはこちらの記事をご覧ください↓
装具をつけると歩きにくい
人によっては装具を着けるとうまく歩けない、装具を着けない方が歩きやすいと感じて装具を着けたくなくなる場合もあります。
この場合、おそらく装具が今の身体の状態に合ってないのでしょう。
リハビリの時はその装具が目的に合っていたけれど、退院後の生活を考えると他の装具を検討した方が良い場合もあります。

Hさん
病院で作った装具しか知らないので、別の装具を検討するという選択肢は自分の中になかったです。
病院で作った装具を使い続けるか、装具をやめてしまうかどちらかかと思ってました。

みうら
装具はいろんな種類がありますし、装具の見た目が似ていても全然違う機能の装具もあります。
装具の形状が少し変わるだけで、歩きやすさが大きく変わることはよくあります。
今の装具が身体に合わないから装具をやめてしまうのではなく、今の身体に合った装具を再検討してみるのが良いと思います。
見た目の問題・重さの問題
「装具の見た目がイヤだ」「装具は重くてイヤだ」というのは、わがままを言っているみたいで医者や理学療法士に言いにくい…と感じるかもしれません。
けれども、退院後の装具は使う人の生活を安全で豊かにするためのものなので、それがかなっていないのなら正直に言ってもらって大丈夫です。
装具を着ける目的や、装具がないことで起こるデメリットを知った上で、自分には必要ないと判断して装具をはずすことは悪いことではありません。
ただし安全面を考えて、理学療法士さんに装具をはずす際に気を付けることや、装具をはずすために踏むべき段階を確認して慎重に進めるほうが良いでしょう。
装具を着ける目的をもっと知りたい方はこちらをご覧ください↓
以上が、装具をやめたい、軽くしたいと思った時に知って欲しいことでした。
装具は使う人の立場によって、さまざまな役割があります。病院で作った装具が必ずしも生活で使うのに最適な装具とは限りません。
装具をやめてしまう前に、退院後の生活を知った上で、今の自分の身体にとって最小限の装具を再検討してみるのも良いのではないでしょうか。
最後に脳卒中のリハビリテーションに関するおすすめの書籍をいくつか紹介します。ご興味がある方は、ぜひご覧ください。







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