こんにちは!生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
前回はプラスチック短下肢装具の継手「タマラック」のご紹介をしたのですが、今回はタマラックと一緒に使われることが多い「スナップストップ」(オットーボック社製)というパーツについてご紹介します。
タマラックの紹介はこちら↓
スナップストップとは
スナップストップの特徴と機能
スナップストップは足継手つき短下肢装具の、後方バンパー(底屈ストッパー)として使うパーツです。
タマラックなどの継手と併用することで、背屈方向は自由に動いて底屈は制限をかけるという機能を発揮します。
つまり、まっすぐに立った時に足首をどの角度で保つか、そして足首をどれだけ上に向けるかをきめるのがスナップストップです。
高さが4種類あって底屈制限の角度を簡単に変更できるのが特徴です。
高さは3.5mm、5.5mm、7mm、9mmの4段階で、通常の初期設定は5.5mmです。
1段階パーツの高さを変えるごとに約2.5度角度を変更できます。

スナップストップの交換方法
交換方法は簡単で、装具の後方上パーツについているスナップストップ本体を下に引っ張り抜くだけ。
ものによっては結構しっかりとくっついていて抜きにくいかもしれません、そんなときはマイナスドライバーなどをプラスチックとスナップストップの隙間にさして、少し隙間を広げてあげればすぐに抜けると思います。
新しいスナップストップは、抜くときと逆の要領で入っていた場所に差し込めば交換完了です。底屈方向に力をかけてしっかり止まっていればOKです!
スナップストップの使い方
どんな時にスナップストップを使うのか

Zくん
スナップストップは見たことがあるのですが、交換して角度を変えられるとは知らなかったです。
どんな時に使えるのでしょうか?
そうですね、よく使われるパーツですが意外と意識されていないパーツでもあります。
装具を作るときに背屈角度(足首の角度をどれだけ制限するか)はとても重要な要素なので、なかなか〇度で!と簡単には決められないですよね。

Zくん
その通りです。どの角度が最適なのか、やはり使ってみないと分からないというのが正直なところです。
この角度だ!と私たちが思っても、ユーザーからするとしっくり来ていないこともあるように思います。
そんな時に役立つのが「スナップストップ」です!例えば、装具の初期設定は背屈0度で作ったとすると、作った後に背屈角度をー2.5度~5度まで調整することが可能です。

図のようにおよそ2.5度刻みで背屈角度が変えられます。
バックニーや足先のつまずき
継手付きの短下肢装具を使って歩いているが、膝のバックニー(反張膝)がでてしまう。
もしくは、足首がうまく上がらずに、足先を床に擦ってしまう。
こんな経験はありませんか?

Zくん
あります。装具ですべてが解決するわけではないので、リハビリでなんとか改善するしかないと考えていました。
それも確かにそうなのですが、スナップストップの高さを高いものに変更して、足首の角度を変える(背屈角度を強くする)ことで解決する場合もあります。
1段階で約2.5度角度が変わるので、もし背屈0度で作製してたら背屈5度まで角度を変えることが可能です。

Zくん
なるほど!簡単に交換できるなら、角度を変えて歩いてもらって本人の感覚や見た目で、どちらが適しているか決められますね!
はい、パーツさえあれば簡単に変えられるのでぜひ義肢装具士に相談してみてください。
バックニーや反張膝に関してはこの記事を参考にしてください↓
膝折れや膝の不安定感
逆に今まで膝を突っ張ってバックニーにすることで安定感を得ていたのに、装具でそれを制限されると膝折れの不安を感じる場合があります。
そんなときはスナップストップを低いものに交換して、背屈制限角度を緩めることで安心して歩くことが出来ます。

Zくん
急激に制限しすぎると歩きにくく感じることもあるので、段階を踏めるのはありがたいです。
スナップストップはパーツだけを買うことはできるのですか?
スナップストップにかかる費用
スナップストップは全ての高さがセットでついてくるわけではないので、もし他の高さを買いたいときは完成用部品価格(基準価格)3000円かかります。

Zくん
小さなパーツなのに高いですね!
それではいくつも持っておくわけにはいかないですね💦
そうですね、なので高さを変えたいときは義肢装具士に相談して、交換してもらうのが良いと思います。
スナップストップのデメリット
靴の履きやすさ

Zくん
とても心強いパーツですが、なにか着けることでデメリットはあるのですか?
うーん、あまりデメリットがないのでよく使われているのですが、スナップストップをつける高さによっては靴が履きにくくなることがあります。
ただし、通常継手よりも少し上に設置するため、靴に当たることはないので、あまり気にする必要はないと思います。
パーツの破損
一番気になることは、パーツの破損かもしれません。
いつのまにかパーツがとれてしまって、角度が大きく変わってしまっているのを見たことがあります。
本人は意外と気づかず使ってしまうこともあるので、定期的に角度は確認しておいた方がよいですね。
音の問題
たまに言われるのですが、歩行時にスナップストップがぶつかる音が気になる場合があります。
あまり大きな音ではないのですが、静かな場所ではやはり気になるかもしれません。
そんな場合はスナップストップのぶつかる部分に薄いクッションなどを貼って、音を緩和するのが良いでしょう。
以上がスナップストップに関する解説でした。
最近では、継手付きのプラスチック短下肢装具にはほとんどの場合、調整可能な底屈ストッパーが使われています。
でも、なかにはプラスチック同士がぶつかって制限をかけている、調整ができないタイプのものもあります。
もしかしたら、角度を変える必要があるかもしれないと思ったら、スナップストップなどの底屈制限パーツを使っておくことをおススメします。
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