こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
装具を使っている方は、むくみ(浮腫)によって装具がきつくなったり緩くなったりして困っている方がとても多いです。
この記事では、むくみの原因や対処法、装具との関係についてわかりやすく解説していきます。
「むくみ」とは?
むくみの正体は?
むくみの正体は「皮膚の下に溜まった水分」です。水分は重力によって、身体の下の方に行きやすいので、足は特にむくみやすいです。
また高齢者は身体機能の低下により、特に疾患がなくてもむくみが発生しやすいと言われています。
普通は多少のむくみは生理現象として特に気にする必要はありません。
ですが、装具を着けていると少しのむくみでも装具がきつく感じたり、ベルトの跡がくっきりと残ってしまって気にせずにはいられないことがあります。
むくみのチェック方法
自分の足の腫れがむくみなのかどうかを判断するには
①まず、むくみが気になる時にすねや足の甲を指で強く押してみる。
②指で押した跡がすぐに戻らないようなら「むくみ」が出ていると判断できます。

むくみの原因とは
むくみの原因
むくみの原因は様々で、たくさんの要素が関係してむくみが発生していることが多く、原因を特定してすっきり改善するのは難しいこともあります。
むくみの原因として考えられる要素を「全身性のむくみ」と「局所のむくみ」に、分類したのが下の表です。

麻痺した足のむくみ

Hさん
私の場合「脳卒中の原因は、食生活の偏りと運動不足」と医師に言われたことがあります。
食生活の偏りは脳卒中だけでなく、むくみの原因ともなるのですね。
はい、脳卒中もむくみも血流が滞ることに関係しているので、脳卒中後の生活において食生活の改善はとても大切ですね。
特に、塩分を取りすぎると体内の塩分濃度が高まり、塩分濃度を薄めるために身体が水分をため込もうとするので、むくみが生じます。
また、たんぱく質の低下もむくみの原因となります。
たんぱく質には、血液中の水分量を調整する働きがあります。たんぱく質が不足すると体内の水分バランスが崩れてしまい、むくみやすくなるのです。
たんぱく質不足は筋力低下にもつながるため、食事でしっかりと摂取しましょう。

Hさん
脳卒中後、バランスのとれた食生活にはとても気を付けています。
でも、運動不足がなかなか改善できません。特に、手足に麻痺があるとスポーツなども難しいし…。
そうですね、無理のない範囲で日常に運動を取り入れることがとても大切です。
特に、退院後も通所リハビリや訪問リハビリを活用して、リハビリテーションを行うことが重要です。
ウォーキングやストレッチなども、むくみの改善にとても効果的ですよ。
むくみと装具の関係
ベルトの締め付けとむくみ

Hさん
私はふだん、プラスチック製の短下肢装具を着けているのですが、ベルトの締め付けによるむくみが気になります。
ベルトを締めている部分が、くっきりと跡になっているので心配になります。
そうですね、装具のベルト(特に足首)はしっかりと締めることが大切なので、跡が残るからと言って緩めるわけにもいきません。
実際、装具のベルトは靴下のようにぐるりと一周締め付けるわけではなく、前方から抑える形なので、血流を阻害してしまうことはほとんどありません。
ベルトのせいでむくみが出る、というよりは、むくみのせいでベルトの跡が残りやすいと考えた方が良いでしょう。
跡が残りにくいベルトの工夫

Hさん
装具のせいで、むくんでいるわけではないと分かって安心しました。
とはいえ、ベルト跡は気になる…という場合、装具でなにか工夫できることはあるのですか?
はい、ベルトの跡をなるべく残らないようにするには、以下のような工夫が考えられます。

- ベルトの幅を広げて圧力を分散させる
➤足首部分は幅が広いと足首に食い込むので注意! - ベルトの「あて」にクッション性を持たせて圧力を減らす
➤ベルトの厚みが増えるので靴に重なるような場合は注意! - ベルトの本数を増やして圧力を分散させる
➤ベルトを着ける手間が増えるので注意! - ベルトの位置を変える
➤ちょうど靴に重なるような場合は位置を変えると改善することも…
むくみを改善するわけではありませんが、ベルトの圧力を少しでも減らすことで跡は残りにくくなります。
それぞれの注意点も挙げておいたので、ベルトを変える場合は注意してみてください。
装具はむくんだ状態に合わせる??

Hさん
いろいろと気を付けていても、夕方にはやっぱり多少むくみが出てしまいます。
こんな場合、装具を作るときはむくんだ足に合わせた方が良いのか、むくんでいない足に合わせた方がいいのか、どちらでしょうか?
よく聞かれるけれど、難しい質問ですね。
夕方に少しむくむ程度ならあえて装具を大きくする必要はないのですが、むくみで足が窮屈に感じたり、不快感を感じるなら対処が必要です。
でも、足がぱんぱんにむくんだ状態で足を計測すると、骨の位置がわかりにくかったり形状がぼやけてしまう心配があります。
また、むくみを気にして装具を緩く作りすぎると、歩行の不安定感に繋がったり、変形を許してしまうなど、様々なデメリットがあります。
そのため、私の場合はむくんでいない状態で計測をして、むくんだ時の周径変動を考慮して少し余裕をもって作製することが多いです。

Hさん
なるほど。そういった考慮ができるんですね。
計測の際に、むくみやすい体質であることや、今がどれだけむくんでいる状態かを伝えることが大事なのですね。
むくみ解消グッズ
むくみを解消するには、まずはむくみの原因となっている疾患を治療すること。
そして、バランスの取れた食事に、適度な運動とストレッチ。結局は脳卒中の再発予防として、言われることばかりですね。
最後に、むくみを解消する片麻痺でも使いやすいグッズをご紹介しておきます。
ゆるーい着圧ソックス
むくみ対策と言えば着圧ソックスですが、医療用のものは圧が強く片手で履くのはかなり難しいです。
また、正しい着圧を選び、適切に着用しないと逆効果になってしまうこともあります。
一方、市販の着圧の弱いものであれば、履きやすく比較的安く手に入ります。
もちろん、医療用に比べたら効果は低いかもしれませんが、一度試してみるのもアリだと思います!
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座って使えるステッパー
ステッパーと言えば、立って使うダイエット器具というイメージがあるかもしれませんが、座って使えるものもあります。
むくみ解消には足の筋肉を使って、血液を循環させることが大切です。
大げさな運動をしなくても、ステッパーに足を乗せて気が付いた時に踏んでおくだけで、効果があります。
塩分チェッカー
むくみ解消とは少し違うかもしれませんが、塩分のとりすぎはむくみの大敵です。
また、脳卒中の再発を防ぐ意味でも、今の食事は大丈夫なのか、自分の味覚はどうなのか、知っておくのは大切です。
もし、思ったより食事の塩分量が高いことに気がついたら、調味料を減塩に変えてみるなど工夫してみてはどうでしょうか。
以上がむくみと装具についてのお話でした。
この記事を読んで、少しでも気になるむくみを改善できることを祈っています。
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。
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