ゲイトソリューションについて

長下肢装具・短下肢装具

こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。

今回は、短下肢装具の足継手「ゲイトソリューション」についてご説明します。

ゲイトソリューションとは

ゲイトソリューションはパシフィックサプライ社で開発された油圧式底屈制動足継手です。

油圧式底屈制動??と専門用語が並びますが、簡単に言うと「足首の動きを適度にコントロールする足継手」です。

今までの短下肢装具は動きを固定することを目的として作られていましたが、ゲイトソリューションは「足首の動きを固定しない足継手」という点で画期的な継手です。

では、足首を固定しないならどんな働きをするのかというと

【ゲイトソリューションの特徴】

(1)足をあげた時に、麻痺した足がだらんと下にさがってしまうのを適切な力で防ぐ

(2)踵が床に着いた後は、足裏がゆっくりと床に着くようにブレーキをかける

(3)足裏が床に着いたあとは、力を加えず前方へのスムーズな体重移動を邪魔しない

この3つがゲイトソリューションのポイントです。

下図はパシフィックサプライホームページより引用したゲイトソリューションシリーズ写真です。

ゲイトソリューション/ゲイトソリューションデザイン | 製品詳細 | 製品・サポート | パシフィックサプライ株式会社

ゲイトソリューションのメリット

ゲイトソリューションのメリットは自然な歩行を邪魔しないことです。

そのため、麻痺した足がだらんと下にさがってしまうのを防ぐ力(制動力)は必要最低限になるよう調整します。

この制動力の調整は、付属の工具で簡単にできます。

継手内部の油圧で制動力をコントロールしているので、筋肉に近い動きが自然に再現できます

また、ゲイトソリューションは継手パーツなので、金属支柱付き短下肢装具にもプラスチック短下肢装具にも着けることが出来ます

ゲイトソリューションデザイン(GSD)と呼ばれる、日常での使いやすさや靴の履きやすさ、デザイン性を重視したモデルも発売されています

ゲイトソリューションのデメリット

ゲイトソリューションは画期的で素晴らしい継手なのですが、使い方や使う人によっては重大なデメリットがいくつかあります。

デメリット1:適応範囲が狭い

ゲイトソリューションは発売されてすぐに、そのメリットが多くのリハビリ現場で認められ、実用されました。

しかし、実際に試してみて思うのは適応範囲の見極めがとても難しいということです。

脳卒中後遺症をもつ患者さんの多くが、筋肉の過度な緊張(痙性)を経験します。

この過度な緊張に対して、ゲイトソリューション継手では適切な力が発揮できない場合があります。

ゲイトソリューションの制動力は1~4の無段階調整が可能ですが、最大の制動力4設定でも時によって痙性に負けてしまう場合があります。

そのため、メーカーの適応基準としては

  • 痙性が軽度~中等度
  • 著しい足部の変形拘縮がない
  • 著しい膝折れ反張膝がない

こととされています。

※制動力3.5以上での使用は継手破損のリスクがあるため推奨されていません。

脳卒中後遺症の難しいところは、退院後の変化が容易に予測できないことです。

入院中はリハビリ室で上手くゲイトソリューションを使いこなしていたとしても、退院後痙性が強くなり適応ではなくなってしまう場合もあります。

そのため、適応の見極めは慎重に行う必要があります。

デメリット2:体重制限がある

意外と知られていないのが、継手の体重制限があるということです。

通常のゲイトソリューションは体重70Kg制限

ゲイトソリューションデザインR1は体重90Kg制限

となっています。体重が70Kg以上の人は普通にいるし、作製時はギリギリセーフだったけど退院後に体重がオーバーしてしまった、ということもあるので注意が必要です。

デメリット3:アフターフォローが不可欠

制動力の調整範囲や体重制限を踏まえると、作製後のアフターフォローが不可欠なことがわかります。

また、調整不良や破損にすぐに気づけるように、使用者やその家族の理解も不可欠です。

ゲイトソリューションに限らず、装具は使い方や適応を見誤ると効果がないどころか、逆効果となってしまうことがあります。

全ての装具でアフターフォローは必要なのですが、ゲイトソリューションにおいては気づいたら合わなくなっていた!ということが多いので、特に注意が必要です。

デメリット4:費用対効果の問題

費用対効果の問題が、一番難しい問題かもしれません。

ゲイトソリューション継手は継手だけでも5万円以上するので、そのパーツを用いて装具を作ると10万円以上の費用がかかります。

おおよそ普通のシューホンの2倍ぐらいの価格になってしまいます。

実質の負担額は人それぞれだし、効果の感じ方も人それぞれです。

一概には言えませんが、慎重に適応を検証して使用する必要があると思っています。

架空の症例紹介

オルトップ→ゲイトソリューションの例

Jさん
Jさん

私はゲイトソリューションデザインを使って日常生活をしています。

もともとはオルトップLHを使っていたのですが、訪問リハビリの理学療法士さんにすすめられてゲイトソリューションデザインを使ってみたのがきっかけです。

こちらが実際に私が使っている装具です。

Jさんが使用している装具

おしゃれですね!もともとオルトップLHタイプを使っていたということなら、十分に使いこなせそうですね。

オルトップLHはゲイトソリューションと同様に筋肉の緊張が高くない人を対象にしているので、オルトップからゲイトソリューションデザインへの移行や、その逆も比較的多いです。

オルトップシリーズに関してはこちらの記事をご覧ください↓

Jさん
Jさん

ゲイトソリューションデザインを初めて使った時から動きの違和感はありませんでした。靴もオルトップLHの時に履いていたものをそのまま履けました

足をついた後にスムーズに体重が前に移動しているのが、自分でもわかります。

制動力3に設定しているので、オルトップLHの時よりも躓くことが減りました

ちなみに屋内では以前使っていたオルトップLHを使っています。ゲイトソリューションデザインは外出用として使っています。

素晴らしい使い方ですね!ゲイトソリューションデザインは靴を着用して使うことが前提となっているので、屋外用として使っている人が多いですね。

屋内でも使いたい場合はゲイトソリューションなどの装具に適したルームシューズ「ゲイトフィックス」を使うことをおススメします↓

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長下肢装具+ゲイトソリューションの例

Kさん
Kさん

私は急性期病院でリハビリ用に長下肢装具を作りました

装具作製時の記憶は発症間もないのでうろ覚えですが、医師や理学療法士が集まって話し合いをして装具が決まったようです。

お恥ずかしい話、そんな高機能な継手がついているとは気づかなかったです…。装具の相場はよくわかりませんが、かなり高額だった印象はあります

Kさんが使用していた装具

長下肢装具から短下肢装具に変更(カットダウン)できるデザインで、足継手の反対側にはWクレンザック継手がついていて、固定から制動まで幅広く対応できる仕様になっています。

回復期のリハビリ用長下肢装具としては非の打ちどころがないデザインですが、かなり費用はかかると思います。

今はどのように使っているのですか?

Kさん
Kさん

退院前にカットダウンして短下肢装具として使っています

実は私の場合、筋肉の緊張が徐々に強くなってしまって、結局ゲイトソリューションの機能を使えてないようです。

いうなれば、ガソリンモードでプリウスに乗っているような感じでしょうか(笑)

すごい例えですね💦実際、そういう方も多いです。

急性期の装具を作製する段階で、その後どれだけ筋肉の緊張が強くなるかは正確に判断できないので仕方がないのですが、少しもったいない気持ちにはなりますね。

生活用装具として次に装具を作り直すときは、機能の再検討が必要かもしれません。

プラスチック短下肢装具+ゲイトソリューションの例

Iさん
Iさん

私は回復期病院でプラスチック短下肢装具にゲイトソリューション継手をつけた装具を作製しました。

理学療法士さんがこまめに調整してくれて、歩行リハビリが順調に進んだように思います。

そのとき使っていた装具がこちらです。

Iさんが使っている装具

プラスチックの短下肢装具にゲイトソリューション足継手をつけたタイプですね。

リハビリが順調に進んだようで何よりです。今も調整しながらこの装具を使っているのですか?

実は、今は踵をくり抜いたシューホンを使っているんですよ。

退院後しばらくたって生活が落ち着いて外出機会が増えました。そうなると今までの装具は靴がとても履きにくいのが欠点に感じました。

その上で、ゲイトソリューションデザイン、オルトップ、シューホンなどいろいろ試着して決めました。

私の場合、足の指先がぐっと下に曲がってしまうクロートゥがあるので、指先まで足を支えてくれるシューホンが一番よかったですね。

足の指先が下に曲がってしまうのはクロートゥといって、脳卒中後遺症のひとつです。

クロートゥとは

脳卒中後遺症の一つで、足の筋肉が過剰に収縮し、足指が丸まってしまう症状。症状が現れる時期には個人差があり、脳卒中後数ヶ月で起こる場合もあれば、数年後に突然現れることもある。痛みを伴ったり、歩行の躓きの原因となることもある。

装具で症状を改善するには、指先までしっかりと支える、指まくらというクッションを指の下に設置する、などの対処法が有効。

踵をくり抜いたシューホンはフレキシブルシューホンというたわみやすい短下肢装具です。

フレキシブルシューホンについて詳しくはこちらの記事をご覧ください↓

装具を替えた時、膝や足首の動きに違和感はなかったですか?

それが意外となかったんですよ。

病院でリハビリをしていた時は膝が伸びきったり、逆のガクッと曲がってしまったり安定していなかったのですが、いつの間にかずいぶんと膝が安定していたようです。

回復期リハビリでのおかげですね。

今まで使っていた装具を変更するというのは、なかなか難しい場面もあるのですが、スムーズに移行できたようでよかったです!

装具の変更に関しては下の記事で詳しくご説明しているのでご覧ください↓

以上がゲイトソリューションに関する説明です。

他の装具とは異なる機能を持つ装具なので使ってみたい場合は、必ず一度は試着してみることをおススメします。

装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。

生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具難民をゼロにすることを目指しています。

気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。

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