こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
「フレキシブルシューホン」という名前は、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
短下肢装具のシューホンの一種ですが、足首をしっかり支えながらも「しなやかさ」を残して歩きを補助してくれる装具です。
よく使われる既製品短下肢装具「オルトップ」もフレキシブルシューホンの仲間ですが、今回解説するのはオーダーメイドのフレキシブルシューホンについてです。
オルトップについて詳しく知りたいという方は次の記事をご覧ください↓
フレキシブルシューホンとは
特徴
フレキシブルシューホンは名前の通り、しなやかに柔軟性のあるシューホンのことです。
※フレキシブルとは…ものがしなやかなさま。柔軟性のあるさまを表す形容詞。
シューホンは通常プラスチックでできており、足関節の部分を細く削ったり踵に穴をあけて動きを出したものがフレキシブルシューホンです。
シューホンを床に置いて、手の力で簡単にしなるようなら「フレキシブルシューホン」であると言えます。
デザイン
フレキシブルシューホンのデザインは
①足関節部分が細くなったタイプ
②踵に穴が開いているタイプ
の二種類に分けられます。

図のように②の踵に穴が開いたタイプの方が「靴が履きやすい」「動きが実際の足関節の動きに近い」「コルゲーションで補強できる」などの利点が多いです。
そのため、現在使われるフレキシブルシューホンの多くは②の踵に穴が開いたデザインになっています。
リジットシューホンとの違い
「シューホンタイプ」と呼ばれるプラスチック製短下肢装具には「リジットシューホン」と「フレキシブルシューホン」があります。
シューホンに関する詳しい解説はこちらをご覧ください↓
リジットシューホンのメリット・デメリット
リジットシューホンとは硬くてたわみがない(足首の動きを固定する)短下肢装具です。
足首を90度に保つことで、つま先が下がらず、立ち上がったときに膝が曲がりにくいように制御する効果があります。
【メリット】
麻痺や筋力低下が強い人でも、体重を安心して支えることが出来る。
筋肉の緊張が強い場合も、足首の動きをしっかりと固定できる。
【デメリット】
硬くてたわまないので、足首の動きが制限されてしまう。
効率よく歩くためには不向き。
使う人によっては、歩きにくく感じることもある。
フレキシブルシューホンのメリット・デメリット
フレキシブルシューホンは最初に説明したとおり、足首部分がしなやかにたわむ短下肢装具です。
つま先を持ち上げつつ、足首の自然な動きをある程度残すことが出来ます。
【メリット】
歩行がスムーズになりやすく、リハビリの成果が得られやすい。
たわみを利用して足首に動きを出すことが出来る。
デザインを工夫することで軽くて、靴が履きやすい。
【デメリット】
たわみやすい分、固定力が少ないので足首や膝が不安定な人には不向き。
デザインによっては反張膝や膝折れをコントロールできない。
フレキシブルシューホンの魅力
フレキシブルシューホンの一番の魅力は「自然な歩き」と「生活のしやすさ」を両立できることです。
以下に、フレキシブルシューホンの魅力を、動きに関することと、生活に関することにわけて解説します。
自然な動きを再現できる
オーダーメイドで作製するため、その人に最適な固定力を設定することができるのが大きな魅力です。
しっかり支えたいところは支えて、動かしたいところは動かす、これがうまく噛み合えば、すごく自然で歩きやすい装具になります。
一方で、固定力が強すぎても弱すぎてもよくないので、その人に合ったバランスを見極めることが大切です。
リジットシューホンではいくらリハビリをしても、装具が動きを固めていることで成果が反映されにくい場合もあります。
一方で、動きのあるフレキシブルシューホンを使うことで、リハビリで得た筋力や動きが、そのまま歩行に活かされる可能性があります。
生活のしやすさ
装具ユーザーが生活の中で装具を使うときに、もっとも気になるのが「靴の履きにくさ」です。
フレキシブルシューホンは踵に穴が開いていることで、普通のリジットシューホンよりは靴が履きやすくなります。
また、プラスチックを薄くしたり足先周りのデザインを工夫することで、さらに靴を履きやすく出来ます。
また、軽量で装具と足の接触面積を減らすことも可能です。
ただし、その人に必要な固定力を守ることは、最優先しなければいけません。
デザインと機能のバランスをとることも、とても大切なことです。
選び方と注意点について
症状の程度に合わせる
足首や膝周りの筋力がかなり弱かったり、筋肉の緊張が高すぎるとフレキシブルシューホンでは固定力が足りない場合もあります。
固定力に関しては、主治医や療法士、義肢装具士と相談しながら慎重に判断するのが大切です。
装具のたわみ具合をチェック
装具のたわみ具合は
①足首部分のプラスチックの形状(踵の穴の大きさなど)
②プラスチックの厚み
③補強の有無
によって変わってきます。この三項目を適切に設定することが大切です。
靴のと相性を確認
装具のデザインと履いている靴によっては、フレキシブルシューホンであっても靴が履きにくいことがあります。
その場合は、靴のサイズやデザインを変更してみることも考えましょう。
靴の選び方やおススメ靴についてはこちらの記事で解説しています↓
足先周りのデザインについて
足首部分の動きと同じぐらい大切なのは、足先周り(主に足指)の動きです。
足指の緊張が高く、足指をぎゅっと握りこんでしまうような場合には、足先までプラスチックを伸ばすようなデザインが良いでしょう。
また、足指が内側に入り込んでしまうような場合には、内側にプラスチックの壁を残しておくことも大切です。
このあたりのデザインは靴の履きやすさと相反する場合もありますが、ここでもデザインと機能のバランスを考えて設計することが大切です。
反張膝や内反に関する注意
魅力の多いフレキシブルシューホンですが、反張膝や内反が強い方には注意が必要です。
たわみが出ることで、反張膝を助長し膝関節に負担がかかってしまうことがあります。
また、たわみと同時に装具にねじれの動きが出ることで、内反を助長してしまうリスクも考えられます。
その場合は、メリットよりもデメリットが大きくなることも考えられるので、慎重に検討することが大切です。
以上がフレキシブルシューホンの魅力と注意点でした。
フレキシブルシューホンは、歩きやすさと靴の履きやすさが両立できる魅力的な装具です。
しなやかさがあるからリハビリで得た動きを活かせて、毎日の生活をぐっと自然にしてくれます。
ただし、快適さを引き出すには適切な固定力を保つ調節が欠かせないので、自分に合った形で作製することがとても大切ですね。
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。
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