こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
脳卒中などで足の麻痺がおこると、歩き方や足の形に変化が出てくることがあります。
その中でも多く見られるのが「クロートゥ(クロウトウ)」と呼ばれる、足の縮こまってしまう状態です。
この記事では、クロートゥがどんな影響をもたらすのか、そして装具によってどのように予防できるのかを分かりやすく解説していきます。
最後にクロートゥにおすすめの靴も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
片麻痺とクロートゥ(クロウトウ)
片麻痺でおこりやすい足部変形
片麻痺で起こりやすい足部変形で代表的なものに「内反足」と「クロートゥ」があります。
「内反足」については、以前の記事でご紹介しているので、参考にしてください↓
「クロートゥ」とは足の指が鉤づめ(鷲の爪のように鋭く湾曲した状態)のように、曲がってしまう変形のことを言います。
足指が強く曲がることによって、指先が地面に向かって丸まった形になります。
クロートゥの原因
麻痺した足は、筋肉のバランスが崩れ、特に足の指を曲げる筋肉(屈筋)が強く働きすぎてしまうことがあります。
その結果、足指がぎゅっと握りこまれたような形になり、クロートゥが起こります。
また、クロートゥは装具の使い方やデザインが原因で引き起こされることもあります。
装具に関わるクロートゥの原因を以下にまとめました。
- 装具の足底が短い
装具の足底が指先を完全に支えられていなかったり、指の付け根までの短いタイプ(オルトップなど)だと、つま先部分に余計な力が入りやすく握り込みの原因となることがあります。 - 足底のパッド位置、高さが不適切
扁平足や開帳足を予防するために足底にパッドを着けることがありますが、そのパッドが逆にクロートゥを誘発している場合があります。クロートゥが気になる場合はパッドの位置や高さを見直してみましょう。 - 装具の固定力が不適切
装具で足首を固定する力が強すぎても、弱すぎても、足指で「地面をつかもう」とする代償動作が強く出て、クロートゥが悪化することがあります。
クロウトウによる生活への影響
痛み
足の指が強く曲がって丸まることで、指先が床や装具に強く押し付けられて痛みが出ることがあります。
また、指先に過度な圧力が集中するため、爪が皮膚に食い込む(陥入爪)や、爪下血腫などを起こしやすいです。
皮膚のトラブル
指先や関節、足裏の一部に強い圧力がかかることで、タコや魚の目などの皮膚トラブルが出やすくなります。
タコや魚の目ができていても、麻痺した足は感覚が鈍く特に痛みを感じないこともあるかもしれません。
それでも、タコや魚の目を放っておくと、圧迫と摩擦で潰瘍(皮膚が深くえぐれてなかなか治らない状態)に発展したり、傷口から感染するリスクもあります。
痛みがないからと言って、放置するのは危険です。
歩きにくさ
足の指が丸まることで接地が不十分になるから、踏ん張りが効かずふらつきやすくなります。
また、足の指が地面に引っかかってつまずいたり、体のバランスを崩して転倒のリスクに繋がる場合もあります。
足指での蹴り出しができないことで、歩幅が小さくなり疲れやすいとも言われています。
靴が合わなくなる
二次的な影響として、指先が変形して厚みが増すことで、靴の中で圧迫され、靴擦れや爪のトラブルにつながることがあります。
曲がった指の関節部に靴が当たって、タコや傷を作る場合もあります。
この場合も、足底のタコや魚の目と同様に放置は厳禁です。
装具でできる解決策
装具でできる解決策は大きく分けると
「指の曲がりを助長させないようにすること」
「曲がった指に余計な圧力をかけないこと」
の二つに分けられます。以下は代表的な解決策についてまとめました。
指の変形を補正する「指まくら・アーチパッド」
指まくら(トークッション)は足の指の下に設置することで、指が曲がろうとするのを防ぐ役割があります。
指まくらは高さが高すぎたり、硬すぎたりすると、指の浮き上がりを助長したり痛みの原因になることがあるので、適切にデザインすることが大切です。
指の曲がりこみを防ぐと同時に、指の裏にクッションが入る形になるので、荷重が分散してタコや魚の目も減らすことが出来ます。
足底パッドは足の骨配列を整えてバランスを保つことで、足指への負担を減らします。
こちらも、適切な高さと位置に設置することで効果が期待できます。
足先ベルト
通常装具の足先ベルトは足の甲のあたりに設定するけど、足指を上から抑えられる位置に設定することで指の曲がりを抑え込むことができます。
ただし、この足先ベルトをつけるには、足を覆うプラスチックの壁(側壁)を指先の方まで延長する必要があります。
そのため、装具の幅が広くなり靴が履きにくくなることがデメリットです。
足底面に柔らかい内張りを貼る
足先ベルトで上から抑え込む場合や、指まくらを入れても指先に痛みを感じるような場合は、足底面を柔らかくするのも一つの方法です。
足底面にクッション性のある内張りを貼ることで、指先にかかる圧力を分散することが出来ます。
クッション材が厚すぎると靴がきつくなることがあるので、注意が必要です。
靴選びのポイント
クロートゥがある場合は、靴のつま先部分(トゥボックス)にゆとりがあるか、トゥボックスがストレッチ素材のものを選ぶと良いでしょう。
トゥボックスにゆとりがあることで、指先が靴の中で擦れたり圧迫されることがなくなり、指先の装具の工夫もしやすくなります。
以下に市販靴でクロートゥがある人におススメの靴を、いくつか紹介しておきます。
あゆみ ダブルマジックⅢ
あゆみの一番人気「ダブルマジックⅢ」は、片麻痺によるクロートゥ(足指の変形)に悩む方々にもおすすめの介護シューズです。
その理由は、足の変形に配慮したトゥボックスにゆとりのある設計と、豊富な幅広サイズが選べる点にあります。
すたこらさんソフト05ワイド
「すたこらさんソフト05ワイド」は、幅広設計と、伸縮性のあるソフトな履き心地が特徴の介護シューズです。
シンプルなので男性にもおすすめのデザインです。片足約150gで超軽量です。
ムーンスター EVE
ムーンスターの「EVE(イブ)」シリーズは、アクティブなシニア女性にぴったりのコンフォートシューズです。
外側ファスナー付きで、脱ぎ履きがしやすく、軽量性にも優れています。
トウボックスにゆとりがあるデザインと、柔らかく足馴染みの良い素材で足先の圧迫を防ぎます。
ただし介護靴ではないので、片足販売されておらず、装具のデザインによっては履きこみが難しいかもしれません。
SaiSai ストレッチニットスニーカー
伸縮性があるニット素材でできた男女兼用デザインのスニーカーです。
インソールが二枚入っていて取り外し可能なので、サイズ調整がしやすく装具でも履きやすいデザインです。
足のトラブルは、放っておくと歩き方や日常の動作にまで影響してしまいます。
クロートゥもそのひとつ。靴や装具の工夫で負担を軽くすることは十分に可能です。
少しでも気になることがあれば、早めに対策をして、毎日の歩みを快適にしていきましょう。
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生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
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