こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
前回の記事では、装具をやめたい、軽くしたいと思う人にその理由と対策についてご紹介しました。
そして、装具をどうしてもやめたいと思った時に、いきなりゼロにしてしまうのではなく、今の身体にとって最小限の装具を再検討することもご提案しました。
では、どのように装具の再検討を行うのが良いか、私自身の経験から具体的なアプローチ例を踏まえて解説していこうと思います。
前回記事をまだご覧になっていない人はこちらも合わせてお読みください↓
まずは装具を軽くすることから
装具を軽くするってどういうこと?
ここで「装具を軽くする」という言葉を使っていますが、これは装具の重量を削ることだけを意味しているのではありません。
身体に対しての装具の介入(装具がどれだけ動きを制御しているか)を減らしていくことを、ここでは装具を軽くすると表現しています。
脳卒中で使う装具を段階的に分けてみた
では、まず私の独断で脳卒中の装具を段階的に分類してみた表を以下に載せます。
同じ装具でも、設定次第で装具の制御力が変わるものもあるので厳密な区別ではありません。この表で、1⃣から数字が上がるにつれて「軽い装具」(身体への介入が少ない装具)と考えてください。

1⃣金属支柱付き長下肢装具
長下肢装具は発症後のリハビリで使うことが多い装具です。生活期でも長下肢装具を使う方はあまり多くないでしょう。
2⃣金属支柱付き短下肢装具
長下肢装具をカットダウン(ネジをはずして組み替え)した短下肢装具です。これで生活している方も少なくはありませんが、屋内外の併用を考えると少し不便なこともあります。
3⃣プラスチック短下肢装具(リジットタイプ)
一般的なプラスチック短下肢装具(シューホン)です。継手のあるものとないものがありますが、ある程度の身体への介入を想定したものです。こういった装具を病院で作って退院する方が多いです。
4⃣プラスチック短下肢装具(フレキシブルタイプ)
3⃣よりも身体への介入が少ないタイプの短下肢装具です。身体への介入度は幅広く、非常に種類が豊富で、オーダーメイドから既製品までいろいろあります。退院後、まずはここを目指す方が多いかもしれません。
5⃣靴・サポーター・歩行補助具
この段階になると装具ではなく、ブーツやサポーター、歩行補助具といった分類になります。屋内と屋外で使い分ける方も多いです。
あなたの装具はどこに分類されましたか?脳卒中の生活期においては、3⃣や4⃣を使っている方が比較的多いかと思います。
脳卒中では年数がたつにつれて麻痺が軽くなって制御が必要なくなる場合と、逆に筋肉の緊張が強くなって強い制御が必要になる場合があります。
以前は4⃣だったのに今は3⃣ということもよくあることなので、必ずしも軽い装具を目指すべきとは考えないでくださいね。
それぞれの装具についてより詳しく知りたい方はこれらの記事をご覧ください↓
装具を軽くするときの心得
装具を軽くするとき、変更するときの3つの心得を挙げておきます。心の片隅に置いておいてください。
心得その1「焦らない」
装具をやめたいという思いから焦ってしまう気持ちはよくわかりますが、焦って装具を変更しても良いことはありません。時には装具をもとに戻すことがあってもいいのです。脳卒中後の回復期間は6カ月などと言いますが、決して6か月以降は良くならないというわけではありません。脳卒中後の生活は長いです、一歩一歩確実に前進していきましょう。
心得その2「比べない」
集団でのリハビリなどに通っていると、あの人は片麻痺なのに装具を着けていないみたいだ。とか、なぜ自分だけこんな大きな装具を着けないといけないのか、と比べてしまうことがあるかと思います。脳の障害は目に見えない上に、人それぞれいろんな後遺障害や回復過程があります。周りの人と比べて、大事な判断を誤らないよう気をつけましょう。
心得その3「身体のサインを無視しない」
装具をやめたいという強い思いから、自分自身の身体の不調、痛みや疲労をつい無視してしまうことがあります。特に脳に障害があると、通常よりも身体のサインに気づきにくいことがあります。ちょっとした違和感や不調に注意を払い、周囲の人(家族やセラピストなど)の耳の痛い言葉にもしっかり耳を傾けて、立ち止まる勇気を持ちましょう。
具体的なアプローチ例をご紹介
装具ユーザーOさんの場合


Oさん
病院で長下肢装具を使っていて、その装具を短くした金属支柱付き短下肢装具をつけて退院しました。
装具に靴がついているタイプだったので、重たいし、屋内と屋外で同じ靴というのが不便で訪問リハビリの理学療法士さんに相談したところ、プラスチックの装具があることを教えてもらいました。
病院で金属支柱付き長下肢装具を作った場合、カットダウンしてそのまま金属支柱付き短下肢装具で退院する場合と、プラスチック短下肢装具などを新たに作って退院する場合があります。
Oさんの場合は金属支柱に前開きの靴がついたタイプですが、同じ金側支柱でも足を覆う部分がプラスチックのものもあります。
入院期間やリハビリの進み具合、ご本人や家族の状況によって同じ病状でも同じ装具を着けて退院になるとは限りません。
退院して、初めてプラスチック短下肢装具の存在を知るということもあります。院後も通所リハビリや訪問リハビリを利用していれば、理学療法士さんにきいてみるのが良いですね。

Oさん
たまたま、通所リハビリの施設で中古のプラスチック短下肢装具があったので、見せてもらうと軽くて使いやすそうだと感じました。
サイズが合わなかったので試着したり歩いたりはできませんでしたが、装具を今より軽くしたいという気持ちが強くなりました。
装具を変更するときは、試着用装具で試しに立ったり歩いたりできると不安が少なくなりますね。
でも、試着用が常備されているような施設は少ないし、試着用があったとしてもオーダーメイドで作るものなので足に合わない場合も多いです。
そんな場合は信頼できる療法士さんやかかりつけ医に、今の自分の身体に気になる装具が合っているのかどうか相談してみると良いでしょう。
「これなら試してみてもいいのでは?」とか「これはさすがに厳しいんじゃないか」といった判断をもらえるかもしれません。

Oさん
その後、通っている通所リハビリに併設している整形外科で診てもらって、プラスチック短下肢装具の処方をうけることが出来ました。
病院を退院してちょうど2年が経った時期でした。ずっと使っていた装具を変更することは自分の中で大きなチャレンジでした。
そうですね、退院してからずっと使っていた装具を変更するというのは、期待もあるけれど不安もあると思います。
でも、前使っていた装具が使えなくなるわけではないので、前の装具は大事に持っておいていつでも戻せるようにしておいた方が安心ですね。

Oさん
結果的に、装具の変更は私にとって大正解でした。
前の装具は靴がついていたので、屋内では外していることが多く、ほとんど車椅子で生活していました。
屋内でもプラスチック短下肢装具を使うようになって、日常で立ち歩くことが増えたように思います。靴を履いて外に出れるので、外出の機会も増えました。
リハビリを続けて次はオルトップやGSD(ゲイトソリューションデザイン)にチャレンジしてみるという目標ができました!
それは良かったです。初めは不安ですが、チャレンジしてみて良かったですね。
日常で、ベッド上や車椅子での生活が多い方は、立ち歩く機会が増えるだけで十分にリハビリ効果があります。どんどんと、外出の機会が増えると良いですね。
装具ユーザーGさんの場合


Gさん
私はもともとプラスチック短下肢装具を使っていましたが、普通のスニーカーが履けないのがイヤでした。
通っている通所リハビリにオルトップを着けている人がいて、スニーカーを履いていたので興味が湧きました。
通所リハビリでは、片麻痺の方も多いので、他の人がどんな装具を使っているのか気になりますよね。
いろいろ情報を得てお互いに情報交換をするのはとても良いことですが、だれかと比べて焦ったり落胆することがないように気楽に受け止めましょう。

Gさん
通所リハビリに義肢装具士さんが来ていたのでオルトップを試着できないか聞いてみたところ、快諾してもらえました!
通所リハビリの時間に持ってきてもらって、試着と試歩行をすることが出来ました。
それは良かったですね!オルトップやゲイトソリューションなどは既製の装具なので、オーダーメイドに比べたら試着がしやすいと思います。
でも、通所リハビリに義肢装具士が来ていることは、そんなに多くないのでGさんはラッキーだったのかもしれませんね。
通所リハビリや訪問リハビリで連携している義肢装具士がいない場合、近くの義肢装具製作所に直接連絡してみるのも良いでしょう。
会社によって様々な体制があるので、かならず試着がかなうかはわかりませんが…。

Gさん
オルトップを試着して歩いてみたのですが、長時間歩くと足の指がグッと下に曲がってしまうのが気になりました。
でも、オルトップなら手持ちのスニーカーを履くことが出来て、とても軽かったのですごく気に入りました。
うーん、なるほど。足指の曲がり込み(クロウトウ)や足首の内反、反張膝などといった症状をどの程度許容できるかは悩ましい問題ですね。
医師や理学療法士、義肢装具士によっても判断が分かれるところだと思います。
長時間の使用で出てくる不具合に関しては、診察時には判断しかねる場合もあります。
クロウトウや反張膝など異常歩行についてはこれらの記事をご覧ください↓
医療職が最も心配することは、装具を軽くすることで転倒してしまったり、元に戻らない拘縮が起こってしまうことです。その心配から、強い口調で装具の変更を制止されることもあるかもしれませんが「愛のムチ」だと思いましょう。

Gさん
心配はありましたが、私の強い希望から、オルトップを作製することになりました。
使っていると段々慣れてくると思っていたのですが、足指の曲がりこみは徐々に強くなっているようで、今までよりも長時間の歩行ができなくなったように感じました。
外くるぶしに傷ができるようになって、やはりオルトップは身体に合っていないのかもしれないと気づきました。
オルトップは普通のシューホンに比べて内反の制御が弱く、足先も短いのでトラブルが起こってしまったのですね。
自分の歩行の変化に気づいてすぐに立ち止まることが出来たのは、素晴らしいことです。
装具は使う人の生活を安全に豊かにするものなので、装具を変えたことで行動範囲が狭まってしまうようでは良くないですね。

Gさん
結果的に、私は元の装具に戻すことにしました。
ですが、チャレンジしてみたことで今の装具への納得感が増したし、足指のクロウトウや足首の内反に対する意識も高まりました。
今は、毎日のリハビリやストレッチを続けて、オルトップが使えるようになることを目標にして頑張っています。
チャレンジしてみることで、今の状態への納得感が得られたことは良い変化ですね。
脳卒中後の身体の変化は人それぞれ異なります。今の自分の状態を知って、日々のリハビリを無理のない範囲で続けてみてくださいね。
すべてが上手く行くとは限りませんが、私の経験上、チャレンジすることでそれが上手く行っても行かなくても、ポジティブな方向に気持ちが向くことが多いように思います。
装具に限らず、病後に諦めていたことや無理だと思っていたことにチャレンジしてみることは、得難い経験になります。
現状を知って目標を設定することで、あなたの生活が少しでも良い方向に向かうことを祈っています。
最後に脳卒中リハビリに関するおすすめの書籍をいくつか紹介します。ご興味がある方は、ぜひご覧ください。
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。




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