
こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
今回は今使っている装具を、別の装具に作り替える時の注意点についてご説明します。
装具の作り替えは、今使っている装具と同じものを作り変えする場合と、機能や形状を変えてちょっとチャレンジした作り替えを行う場合があると思います。
どちらの場合も作り替えで起こりやすいトラブルや注意点があるので、ここからはそれぞれ架空の症例をあげてわかりやすくご説明していきます。
同じ形状の装具へ作り替える時の注意点
プラスチック短下肢装具からプラスチック短下肢装具へ

Gさん
私はプラスチックAFO(プラスチック製の短下肢装具)を3年間使っています。
対応年数を大きく過ぎており、プラスチックの劣化も気になるので作り替えを検討しています。
特に状態の変化はないので、同じ形で作り替えをしようと思っています。
なるほど、状態が安定しているようで安心しました。
プラスチックAFOの場合、状態に変化がないとしても、基本的には毎回足型を計測して新たに作り直します。
3年も同じ装具を使っていると、多少は足の筋肉が落ちたり、逆に活動量が減って太ったりして、足の形状が変わっている可能性が高いです。

Gさん
そうなんですね💦
てっきり前の型を使って、同じように作るものだと思っていました。
今の装具で慣れているのでちょっと不安ですね…。
そうですよね。Gさんの気持ちはよくわかります。
実際に「装具を作り替えて足にぴったりフィットして、歩きやすくなった」と感じる方もいれば
「やっぱり新しいものは違和感があって、前の装具が良かった」と感じてしまう方もいます。
多少の違和感は数日間使っていると解消されますが「どこかに痛みが出る」「歩行時に不安定感を感じる」「躓きやすくなった」などの症状があるときは、調整が必要です。
では、違和感が出てしまう場合の原因と対処法を深掘りしてみましょう。
同じような装具なのになぜ違和感がでるのか
同じように作り変えた装具でも、やはり手作業で作っている以上、ちょっとした変化が出てしまうのが現実です。
起こりやすい違和感の原因を下に挙げます。
作り替えで感じる違和感の原因
- 装具の角度が微妙に異なる
装具の背屈角度(足首を固定する角度)が異なると、バックニー(反張膝)が強くなったり、膝に不安定感を覚えて荷重をかけにくくなる場合があります。 - 装具が微妙に緩い
全体的に装具が緩いと装具の中で足が動いてしまって、不安定感を感じたり、バックニーの原因となることがあります。装具がきつい時よりも緩い時の方が、歩行時の違和感が出やすい傾向があります。 - トウスプリング・側壁の長さなど細部が異なる
装具のつま先の上がり具合が少ないと、つまづきやすくなることがあります。
側壁(足の指側を覆う部分)が短いと、内反がうまく抑えられないことがあります。 - 装具のベルトの位置が異なる
特に足首付近のベルトは少し位置が異なったり、走行が異なるだけで内反がうまく抑えきれなくなることがあります。
起こりやすい違和感の原因をいくつかあげましたが、調整を行う上で大切なのは、前の装具との違いをしらみつぶしに探し出すことではありません。
それよりも、今起こっている違和感の中身を具体的に見つけ出して、ピンポイントで調整していくことが、解決の近道になると考えます。
作り替えが不安な人へ

Gさん
余計に不安になってきました💦
前に作った会社だからと言って同じ人が作るとは限らないし…
やっぱり作り替えはやめておこうかなぁ
余計なことを言って不安にさせてしまってすみません…。
そこは本当に義肢装具士の腕の見せ所でもあり、一方で相性というのもあるかもしれません。
いずれ必ず作り替えのタイミングはやってくるので、破損したり合わなくなって大急ぎで作り替えを行うよりは、今のうちにじっくり調べて自分に合った義肢装具士を探すのが良いと思います。
万一、作ってすぐに上手く行かなかったとしても、作製した製作所に相談すれば納得がいくように調整をしてもらえるはずです。
補装具支給ガイドブックにも以下のような記述があります↓
補装具の引渡し後の不具合等については、災害等による毀損、本人の過失による破損、生理的又は病理的変化により生じた不適合、目的外使用若しくは取扱不良等のために生じた破損又は不適合を除き、引渡し後9ヶ月以内に生じた破損又は不適合は、補装具業者の責任において改善すること

Gさん
そうなんですね!それなら安心です。自分に合った美容師さんを探すような気分で探してみます。
それにしても、私自身病気の後遺症で「固執性」が強く出ることがあって心配なんですよ。
以前作った足型を残してもらうことは難しいのですか?
固執性とは
高次脳機能障害の症状の一つ。「物事に対して切り替えることが難しい」「状況が変わったときに混乱する」「なにか一つのことが気になって仕方ない」などの症状がある。
そうですね、確かに固執性の強い方は装具の作り替えにおいても難渋するケースが多くあります。
通常、足型は石膏で作られており長期保管が難しいので、半年から1年程度で廃棄してしまうことが多いです。
Gさんのように足型の保管を希望する場合は、作製時に製作所にお願いしてみると良いかもしれません。
また、今は3Dスキャナを用いて計測を行う会社も増えています。その場合は、計測データがパソコンに長期保管されているので安心ですね。
3Dスキャナを用いた計測に関しては以下の記事をご参照ください↓
今の装具より固定力の弱い装具へ作り替えの注意点
金属支柱短下肢装具からプラスチック短下肢装具へ

Aさん
私は、昨年金属支柱AFO(金属支柱付き短下肢装具)からプラスチックAFOに作り替えを行いました。
今の装具は前の装具に比べて、たわみやすく足首の固定力が弱くなっています。
そうなんですね。Aさんの場合、金属支柱AFOでしっかりと足首を固定している状態から、たわみやすいフレキシブルシューホンに作り替えているので、まさに難易度UP型の作り替えです。
Aさんのフレキシブルシューホンに関してはこちらをご覧ください↓
AさんはプラスチックAFOに作り替える際に、なにか注意点がありましたか?
固定力を下げた時に注意するポイント

Aさん
はい。訪問リハビリの理学療法士さんから
「膝折れ」「反張膝」「尖足」の三兆候に気をつけましょう。
と言われました。
なるほど。では、その三兆候をそれぞれに説明していきますね。
膝折れ(ひざおれ)について

膝折れとは上図の通り、麻痺した足に体重をかけた瞬間にガクッと膝が急激に曲がってしまう現象です。
膝周辺の筋力不足が原因ですが、金属支柱AFOなどで足首がしっかりと固定されていると、膝もある程度安定します。
実際に想像してみると、膝が曲がるときはだいたい足首も上を向いて(背屈して)いますよね。
その足首の固定性が弱くなることで、ふとした瞬間に膝折れが起きる危険性があります。
特に、階段の上り下りや坂道では普段以上に膝に負担がかかるので要注意です。
反張膝(はんちょうひざ・はんちょうしつ)について

反張膝とは膝が正常な範囲を超えて後ろに伸びきってしまう現象です。
「バックニー」や「ロッキング膝」とも呼ばれます。
これも、先ほどの膝折れと同じで膝の筋力不足が原因です。
足首の固定性が低下したことによる膝の不安定感から、無意識に膝を伸ばし切ってロックした状態で体重を支えようとしてしまいます。
一見、膝が安定して転倒のリスクが減ったようにも思えますが、これを続けていると膝の変形や靱帯損傷に繋がる危険性があります。
また、膝を伸ばし切って歩くことで、歩く速さが遅くなったり、膝の痛みに繋がるなどの心配もあります。
この反張膝が厄介な点は、一度この歩き方が習慣になってしまうと、膝を使って歩くのが難しくなってしまうことです。
反張膝は下肢に麻痺がある患者さんの8割が経験するとも言われています。
もし、歩いている時に膝が伸びきっていると感じたら、なるべく膝が伸びきらないように注意して歩いてみてください。
それだと膝折れがでる、または怖くて体重がかけられない場合は、一度固定性の高い装具に戻してみてもよいかもしれません。
➤反張膝に対する膝装具を知りたい方はこちらもご覧ください
尖足(せんそく)について

尖足はもっと単純で、足首が下を向いてしまう(底屈する)ことです。
装具で足首が下を向きにくいように支えているのですが、その装具の力が足の力に負けてしまうと足首は下を向きます。
その状態が長く続くと、足首が固まってしまって元の直角の状態まで戻せなくなってしまいます。
その固まってしまった状態を尖足と呼びます。
これは、装具の固定性が強かったとしても、足首のベルトの締め付けが緩かったり、装具を着けている時間が少なかったりしても起こることがあります。
尖足になると、とても歩きにくくなるので、普段から足首のストレッチをして、なるべく尖足にならないように気をつけましょう。
固定力が強い装具への装具作り替えの注意点
オルトップからプラスチック短下肢装具へ

Hさん
私はもともとオルトップ(パシフィックサプライ社製)という既製品の装具を使っていました。
別の病気で入院してから、筋力が落ちてしまったみたいで、反張膝が強く出るようになり膝も痛くなってきたので、作り替えを考えています。
ご入院後はどうしても筋力が落ちてしまいがちですね。
オルトップは比較的、固定力の低い装具です。
オルトップシリーズの詳細はこちらをご覧ください↓
そのため、最初は上手く歩けていても、知らず知らずのうちに反張膝が進んでいることもあります。
今回は歩行の変化にすぐに気づけて良かったですね!では、次はどんな装具に作り替える予定ですか?

Hさん
はい、通所リハビリの理学療法士さんがすぐに気づいて指摘してくれました。
次の装具は踵までしっかり覆うシューホンが良いのではないかと、アドバイスをもらっています。
ふむふむ、たわみにくいタイプのシューホン(リジットシューホン)ですね。
シューホンにもいろいろある
リジットシューホン、フレキシブルシューホンなどたわみやすさで大まかに分類することはできますが、実際はグラデーションで段階的に変化します。
➤フレキシブルシューホンについて詳しく知りたい方はこちら
ひと言にシューホンと言ってもいろいろあるので、じっくり検討したいですね。
また、オルトップを長年使っていた方が、突然リジットシューホンを使うと、歩きにくく感じたり、体重をかけるのが怖く感じることがあります。

Hさん
「固定力が上がる」=「安心して歩ける」ではないんですね。
私は10年もオルトップで過ごしてきているので少し心配…
そうですね、足型を採って作るシューホンは既製品の装具と違って、使ってみて合わなかったから交換するということができません。
私自身も、良かれと思って固定力の強いシューホンをおススメしたけれど、上手く馴染まなくて逆に不安な思いをさせてしまったという失敗がありました…
なので、固定力を変化させるような作り替えの時は、特に慎重に試着用装具で確認するようにしています。
同じ病気で同じように麻痺があったとしても、感じ方は人それぞれです。
可能であれば、試着用装具で何度か歩いてみて本人の意見と、リハビリ目線での意見を交わすことが大事です。
作り替え前に装具の試着はできるのか?

Hさん
奥が深いのですね。
試着用の装具というのは、どこでもお借りできるものなんですか?
うーん、それがどこでもというわけにはいかなくて…💦
大きなリハビリ病院とか大きな製作所では、もしかしたら試着用装具も充実して置いているかもしれません。
でも、普通のクリニックや製作所では、多くの人が試せるように様々なサイズの試着用装具が置いてあることは少ないですね。
既製品装具であればサイズで取り寄せて試着することは可能ですが、オーダーメイドの装具を試着用として準備するのはなかなか難しいです。
試着を希望する場合は、事前に病院か製作所に問い合わせてみた方が良いと思います。
装具ラボSTEPsでは、なるべく安心して作り替えが出来るように、ある程度の試着用装具は準備しています。
また、新しく装具を作った際に使わなくなった装具を下取りしてメンテナンスを行い、試着用装具として生まれ変わらせる取り組みも行っています。
ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
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最後に、このブログのお供として手元に置いていただきたい一冊を以下にご紹介します。本ブログでご紹介した、膝折れ、反張膝に対する装具での対処法など詳細が記載されています。
「脳卒中の下肢装具」は写真やイラスト多めで、下肢装具の種類がたくさん紹介されている本です。歩行の問題点に対する基本的な対処法がリスト化されていたり、短下肢装具が種類別にリスト化されていたりと、何度も見返して楽しめる一冊!
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております!!









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