こんにちは、生活期専門の補装具製作所「装具ラボSTEPs」代表 義肢装具士の三浦です。
今回は、装具と靴シリーズの第三弾で、靴を履きやすくするための、装具側の工夫を考えていこうと思います。
装具と靴シリーズの他の記事は以下をご覧ください。
装具で履けるおススメ靴の紹介記事↓
靴が履きやすくなる工夫の紹介記事↓
サイズを上げても靴が履けないのはなぜ!?
装具の上から靴を履くことが出来ない、主な原因を以下に挙げてみました。

対策に関してはできる場合とできない場合があるので「?」をつけています。
それではそれぞれの原因と対策を詳しく見ていきましょう。
足先が入っていかない!甲周りが入らない!
靴の大きさは主に踵からつま先までの「足長」と足指の付け根の幅と周径を測った「足幅」「足囲」で決まってきます。
この「足幅」と「足囲」に大きく関係するのが、装具の側壁の部分(指の付け根を覆う部分)です。

装具に使われるプラスチックの厚みはおおよそ、3~5mmぐらいなので側壁で足を覆うことで足幅が約6~10mm、足囲であれば約15~30mmも広がることになります。
実際の靴のサイズ表記(ミズノ)を見てみましょう。縦が足長(靴のサイズ)で横が足囲と足幅(靴のワイズ)です。これを見ると装具を履くことで、もともとの靴のサイズをかなり大きくしないといけないことがわかります。


Gさん
なるほどね。これを見ると同じ2Eの靴で足長サイズを大きくしても、足囲や足幅がたりずに入らない理由がわかりますね。
なんとか足幅と足囲を広げないような装具の工夫はないのですか?
実は、あります!装具の側壁(足指の付け根を覆う部分)をなるべく短く削ることで、装具を履いた時の足囲と足幅はかなり抑えることが出来ます。
ただし、そうすると足関節の内反を抑えることと、足指(特に親指)が内側に入り込むのを抑えることができなくなります。
そのため、内反が強く出る場合や足指が内に入り込む場合は側壁をなるべく残しておく方が良いでしょう。

踵部分が入らない!足先がつっかえている?

Gさん
側壁の長さは一長一短ですね。足の状態と履きたい靴を照らし合わせて、慎重に考える必要がありますね。
ところで、装具で靴を履くときにあと少しなのに踵が入らない!ってことありますよね。
側壁はできる限り削ったとして、他に削れるのは足先でしょうか?
もう少しなのに踵が上手く入らず自分で履きこめない、ということもよくあります。
「靴が入らないから装具の足先をもっと削って欲しい」と言われることがありますが、意外と足先を削っても変わらないことが多いです。
なぜかというと、足先まで入る手前の側壁あたりでつっかえていることが多いのと、靴には捨て寸と言ってもともと10㎜程度の足先に余裕をもって設計されているので、よほどプラスチックが足より大きくなければ足先がつっかえることはありません。
そのため、あと少しが入らない、という場合は踵部分を削って入りやすくするのが効果的です。


Gさん
踵部分に穴が開いていることで、プラスチックの厚みがなくなって靴が履きやすくなるんですね。
それでは踵は全部削ってしまえば良い、と思いますがやはりデメリットもあるんですね?
はい、踵を削ることのデメリットは装具の足関節に対する固定力(動きを制限する力)が小さくなってしまうことです。
踵部分を削ることで装具がたわみやすくなり、内反による足首のねじれや底屈(足が下に下がる動き)を十分に防げなくなることがあります。
また、継手がついている装具では、継手部分の強度の関係で踵部分を削るのが、難しい場合もあります。

Gさん
なるほど、こちらも一長一短ですね。
削ってしまったら元には戻せないので、慎重に検討する必要がありますね。
以上が、靴を履きやすくするための、装具側の工夫でした。
装具で靴を履くのが難しい理由は装具の問題と、靴の問題と、環境の問題が関係しています。
また、靴の履きやすさは本人のもともとの足幅の広さ、足囲の大きさが大きく関係してきます。
もともと足幅が広い方や、足にむくみが強く出ているような場合は、装具を工夫してもなかなか靴が入らないことがあります。
そんな場合は、靴選びや環境を工夫してなるべく快適に靴を履けるようにしていきたいですね。
装具の修理・作製のご相談は装具ラボSTEPsホームページ内の問い合わせフォームよりお待ちしております。
生活期専門補装具製作所「装具ラボSTEPs」は神戸を拠点に活動していますが、今後は全国各地に拠点を作って装具に困っている人をゼロにすることを目指しています。
気になった方は、装具ラボSTEPsで検索してみてくださいね。
コメント